雨が静かに道を濡らしていた時、ふと道端においてあるものに目がいった。

「………」
「………………」

数秒か数分か、それとも数時間かそれと睨みあって出てきた言葉は

「とりあえず、うち来るか?」

なんてありきたりなものだった。



『猫、拾いました』





拾いました。と題打ってみたがそれが猫との確証は全然まったくこれっぽちもない。
何故なら猫としてのアイデンティティーである耳としっぽはあるものの、それが付いている本体が
人間の5歳ぐらいの体なのだ。
果たして猫か人間か。それとも宇宙生命体Xか。
その前に、なんでそんなカテゴライズに困るような生物が道端に落ちてるんだ。

「…やめた。こんなもん悩んで結果が出るとも思えん」

ぼやきながら頬の傷に消毒液を染み込ませた綿を当てた。
雨のせいで体が冷えているだろうと思い、風呂に入れたまではいいが、やたらと暴れたせいで
あちこちに生傷を作る羽目になった。
その加害者はというと部屋の隅で丸くなっている。
丸まって寝るなんて本当に猫みたいだ。
とりあえず風邪を引かないように毛布をかけてやる(怪我してまで風呂に入れたのにこんなことで
風邪を引かれたのではたまったものではない)。
時計を見れば日付は少し前に変わったところだった。

「俺ももう寝るか」

訳の分からない1日目は取り合えず終わった。






2日目。
起きたのは毎日うるさくなる目覚ましではなく、何かの悲鳴のような声でした。

その声に目を開けるといつもの枕。
いつの間にかうつ伏せになっていたらしい。
そして腹の下には違和感と温かな物体。
上体を起こしてみると昨日部屋の隅に居たはずの猫もどきがつぶれていた。

「うわ、なんでいるんだよお前」

もそもそと布団から這い出てきた猫もどきはきっとこちらを睨みつけてこう言った。

「寒かったからに決まっているでしょう。馬鹿ですか?」

怒っているのを主張するかのように耳はぴんと立ち、尻尾は毛羽立っている。
そう、それだけ見ると猫。
けれど体は5歳児ほどの人間。

「しゃべっても違和感は…ねぇな」

猫もどきは睨みつけたまま、いやむしろ馬鹿にしたような感じで口を開いた。

「しゃべるのが人間だけだと思うのがおかしいんです。人間だけが高等生物だと思うのが傲慢なん
です。あとおなかも空きました。何か用意してください」
「文句とお願いと一編に言うな。そしてその文句は俺だけに言うな」
「うるさいですね。今私が文句を言える相手があなただけなんですからしょうがないじゃないですか」
「そうですか。ったく嫌いなものねーな?」
「野菜が食べたいです。それに原形が分かるものは嫌いです」

猫の癖に野菜を食うのか、とは思っても口には出さなかった。
それよりも意外とすんなりしゃべることを受け入れている自分にびっくりだ。
オムレツを作りながら冷静にそんなことを考えていた。

手があるから普通に子どもと同じ扱いでナイフとスプーンを出してみたら、ごく普通にそれを使
いこなしていた。
以前どこかで教えてもらったのか、それとも自分で学んだのか。

「俺はロックオンだ。お前名前はあるのか?」
「ありません。呼びにくければ好きにつけてくださって結構ですよ」
「そのしゃべり方堅苦しいな」
「そうですか?私にはこれが普通なんです」
「ふーん、ま、いいや。よろしくティエリア」

ティエリアと呼ばれて一瞬耳をピクリとさせたが、それ以外はなんの反応もなく食事を続けていた。

「………っぷ」
「……なんですか」
「いや、なんでも」

訂正、尻尾は正直だ。
どうやら名前はお気に召したらしい。
朝ごはんの次はよれよれになっているシャツの代わりを探し、生活に必要なものを買いに行き、少
しだけ一緒にだらだらとしていた。
風呂は相変わらず苦手そうだったが、買ってやったアヒルは気に入ったらしい。
ベッドはワンルームの部屋に2つもは置けないので共有することにした。
幸い長身なので普通のは小さいとセミダブルにしていたので、2人ぐらいなら余裕で寝れた。
朝のハプニングは不幸な事故だったけれど。
そんな感じで終わった2日目だった。




そして3日目へと続く…?