「俺らって何なんだろうな」 零した言葉は流れるメロディーに乗って消える。 けれど言葉の真意は消えることなく残って、どうしようもなかった。 心の残響 「貴方にしては難しい事を考えてますね」 ピアノのメロディーに乗って、人を小馬鹿にした返事が返ってくる。 後ろで聞いているから表情なんか分からないけど、見なくても分かる。それほど長い年月を過ごしてきている。 きっと小さく笑っているに決まっている。 「俺様にしてとはなんだ」 マリアツェルが揺れる。とゆうか肩も揺れている。 「貴方、難しい事を考えるのは苦手じゃないですか」 確かに苦手だが、考えないわけじゃない。 そうやって口を噤んでいると、演奏を終えたオーストリアがソファセットの椅子に腰掛けた。 プロイセンも行儀悪く寝転がっていた体を起こし、座り直す。 オーストリアはじっとプロイセンが口を開くのを待っている。 長い付き合いというのも考え物だ。 何を言いたいか分かっているという目で此方を見つめてくる。 「ヴェストが」 今までずっと思っていた。 「ヴェストが生まれた時から思ってたんだ。あいつは、神聖ローマに似すぎている」 容姿だけではない。 中身もだ。 イタリアに甘いところがいい証拠だ。 最終的に邪険には出来ないというか、甘いというか、心のもっと奥深くの何かでイタリアに惹かれていると思う。 行き過ぎた友愛にも憧憬にも似たそれは、幼い神聖ローマが抱いていたそれに見える。 求めるものがあまりにもよく似ている。 「あいつはドイツだ。国民は神聖ローマを求めてはいない筈なのに、あいつはどんどん似ていく」 オーストリアは目を閉じる。 遥か昔、一緒に暮らしていた幼い国。 最後は国としての形を保てず、いつの間にか消滅していた彼。 確かに似すぎている。 初めてドイツに会ったときに思った。 彼ではないのかと。 いつの間にか国の中にいたのだとその時プロイセンは言った。 その時はまだドイツは混乱の中にあった。 南北の連携はとれず、プロイセンの地位さえも危うかった。 そんな時に彼は現れた。 そしてドイツは彼の地。もともと神聖ローマの土地だ。 それを考えるなという方がおかしい。 けれど、その時に思った事もある。 私達は人間ではない。消えたはずのものが蘇る事もあるのかも知れない。けど、 「プロイセン、よく宗教などで生まれ変わりというものが出てくるのは知っているでしょう」 イタリアがいる。 彼はローマ帝国の孫であり、同じものは二度存在しないという証明だ。 「生まれ変わりは同じものではありません。同じ魂を持ち、同じ姿をしていても同一ではないのです」 だから彼も同一ではない。 「ドイツは貴方の弟です。これだけは変わらない事実ですよ」 自分達が殺したも同然の彼ではない。 多分この事がずっと彼を悩ませてきた筈だ。 手を差し伸ばせば助けれたかも知れなかった。 けれど、あの時代は混沌過ぎた。 自分達の事で手一杯だったのだ。誰も彼もが。 「そうか。そうだな。ヴェストは俺の弟だ」 いつもの馬鹿みたいな笑い方ではない、力のない笑顔がプロイセンに浮かぶ。 それを見てオーストリアは奥歯をかみ締めた。 国を持たない彼はずっと同じ結末を彼に見ていたのかもしれない。 「貴方はプロイセンでドイツでもあるんです。まあ最も今はどちらが兄か分かりませんけど」 最後の皮肉は自分なりの励ましだった。 考えてしまった心は棘を残すかもしれない。 けれど彼がこれ以上傷つかぬよう、祈りを込めて。 (心の残りが響く) ***** 何が言いたいって普も偶には弱くなるって事を書きたかった。 継承戦争からのヨーロッパは戦争しすぎだけどネタには困らない。 世界史が楽しく感じるここ最近。 間違ってたらごめんなさい。