先日キスをしました。 one more kiss 「はぁーあ…」 「兄さん、溜め息は幸せが逃げていくそうだぞ。菊が言っていた」 「ヴェー、何か心配事?」 自宅のソファで寛いでいたらいつの間にか出ていた溜め息に、弟はよく分からない心配の仕方を、フェリシアーノは直球で心配してくれた。 この二人の優しさにちょっとじーんとしながら、先日の事を思い出す。 押し掛けたローデリヒの家で、コーヒーと製作過程の音からは想像出来ない上手さのトルテを食べていて。 ローデリヒが口の端に付けたかすに気付いていなかったから、取ろうとして。 何故か手より先に顔が動いていて。 ほっぺたが柔らかかったから。 唇も柔らかそうだと思って。 キスをした。 ら、返ってきた言葉がこれだった。 『これも、嫌がらせですか』 流石に凹む。 なんなんだあいつは。 俺が誰にでもそんな事するとでも思っているのだろうか。 いや、思っているからこそ言うんだろう。 「はぁ…」 なんだか涙まで出てきそうだ。 親父、こういう時はどうすればいいんでしょうか。 「俺達に話せないこと?」 フェリシアーノが覗き込んでくる。 別に言いふらすような奴らじゃないし、聞いてもらってもいいかもしれない。 そうじゃないと一人楽しく泣く羽目になりそうだ。 「実はな。ローデリヒとキスをしたんだ」 「ぶっ!!」 「へぇ!!」 ヴェストはコーヒーを吹き出し、フェリシアーノは目を輝かせた。 性格がよく分かる反応だった。 「で、その後に嫌がらせかって言われた…」 「ギル兄ちゃん…」 「兄さん…」 二人の同情の眼差しが痛い。 その後慰めてもらって、更にアドバイスでも貰おうかと思ったけれど帰ってきたのは 「「ローデリヒ(さん)だからあきらめ(たら)ろ」」 お前らやっぱり親切だよな(泣) 弁解すべく俺様は再びローデリヒの家の前にいる。 けれど、インターホンを押す勇気が出なかった。 あーでもない、こーでもないと思っていたら勝手にドアが開いた。 「いつまでそうしているつもりですか」 開いた扉の前にいたのはいつもと変わらないローデリヒ。 そうしていつも通りにリビングに通される。 身構えてきたのにいつも通り過ぎて逆に不安になる。 それともあれか。アレぐらいどうってことないって事か。 悩んでたのが馬鹿らしくなる。 「ローデリヒ。こないだのあれな」 「私は気にしてません」 その言い方にムカッときた。 「お前には嫌がらせだろうけどな、俺はあんな事誰にでもするわけじゃなーよ!!」 済ました顔をしてコーヒーを飲むこいつが嫌になって、胸倉を掴んで引き寄せた。 そうして今度は意識的に唇を合わせる。 「お前だからすんだよ」 言ってから気が付いた。 こいつの事が好きなんだ。 「だから、気にしないとか言うなっ」 掴んでいた手を離し、浮かせた腰をソファに落ち着かせる。 やっといてなんだけど、ローデリヒの顔が見れない。 「お馬鹿さん」 「っ、てめ!!」 ローデリヒの長く細い指が俺様の唇に当てられる。 「キスの前に言う言葉があるでしょう」 言われてはっと、ローデリヒを見た。 少し照れたような表情が可愛い。 「好きだ」 さぁ、もう一度キスをしよう。 ***** すいません。甘いのが書きたかった。 でもこれのBGMが右肩の蝶だって言っても誰も信じてくれないと思う…。