好きだよって言ったらどんな顔をするかな。 ずっとそれが言いたくて、でもずっと、多分これからも言えなくて。 それでも気持ちだけはずっと続いていく。 理解できなかったり、怖いと思うこともあるけど。 「いつまでも好きだよ」 これだけは在り続ける本当。 城仕えとフリー。 どちらを選ぼうかと悩んで、結局フリーになった。 大半の人間は城仕えを選んだけれど、誘いも来ていたけれど全て蹴った。 色んな奴に馬鹿だなって言われたけど、この御時世どう転ぶか分からない。 だからいつでも何処にでも動けるフリーを選んだ。 教師はお前らしいと笑って見送ってくれた。 最初の2・3年は仕事は選べなかったけれど、それでも何とか食い繋げた。 そうして名が売れるようになってから暫らくして、あいつの名前も聞こえてきた。 どこかの村で何とかやっているようだった。 学園にいた時と変わらない生活をしているようだった。 『何処其処の村に誰でも手当てしてくれる医者がいる』 それだけで、誰か分かった。 そんな馬鹿なことするのはあいつだけだと知っていた。 この世は弱いものから死んでいく。 忍としてだけでなく、市井の人間でも同じだった。 今も、自分の後ろには屍が並んでいる。 手にかけたものもいれば、誰かにやられた者もいる。 同情も畏れも何も無かった。 それが唯一学園を出てから変わったものだった。 あの時は死は遠く、無縁では無かったけれど果てしなかった。 けれどあいつは違った。 委員会で、実習で、何かし死に近いところにいた気がする。 だからこそいつでも誰にでも救いの手を差し伸べれたのだと思う。 甘いと皆言うけれど、俺は偶に怖かった。 引き摺られはしないかと、怖かった。 「そこ、まだ生きてるよ」 黒いものに話しかけられた。 「やあ、曲者だよ」 包帯まみれの変な人とは、学園を出た後でも何度か顔を見合わせた。 「殲滅は仕事のうちじゃありません。貴方こそ何をしているんですか」 「血の臭いが聞こえて来たからね。ピクニック」 「帰れよ暇人」 喉で笑う音が聞こえる。 この人は本当に苦手だ。得体が知れない。 「暇人だからさ、ちょっと暇つぶしに付き合ってよ」 「嫌ですよ。俺もう仕事終わったんで」 覆面越しだけど笑みが深くなったのが分かる。 「君は本当にいい目をするね」 「は?」 「学園にいる時からそうだ。彼の危さに憧れ怯え、それでも求める」 「何の話ですか」 さっきまで考えていたことを言われ、声が硬くなった。 タイミングが良すぎる。頭の中覗いたんじゃないだろうな。 「若いねってことだよ」 「本当に消えてください」 イラつきのあまり苦無を投げたけれど、一瞬早く闇の中に帰っていった。 代わりに何か悲鳴が聞こえてきた。 聞き覚えがある、間違えるはずのない声。 「な、なんで苦無?」 「伊作!!」 「わ、留さん!?」 投げた苦無に裾を縫いとめられた伊作は、持っていた救急箱を落としそうになって それを受け止めようとして着物の裾を破いて、結局転んだ。 「何してんだ」 とりあえず手を貸して起き上がらせた。 「戦って聞いたからね。医者として」 「相変わらずか」 「うん。あ、怪我してるね。ちょっと座って」 変わらない。 何処でも何時でもこいつはこいつのままだ。 「危さってなんだよあのおっさん」 「何?何の話?」 「伊作は伊作だなって話」 分かったような分からなかったような顔をして治療をしていく伊作を見て、気が抜けた。 勝手に怖がって馬鹿みたいだ、とかあんなおっさんに気付かされるとはとか色々気持ち はあったけど。 「好きだよ。ずっと」 「へっ」 「好きだ」 「ととととと留さん!?何?頭打ったの」 赤くなったり青くなったりしてうろたえる伊作が無性に可愛く思えて、抱きしめて頭に口付けをした。 なんだか腕の中でもがいて奇声を発していたけど、それすら可愛く思えるとか。 今まで俺は何を悩んでたのか、馬鹿らしくなった。 「さて、と。俺依頼主に報告してくるわ。終わったらお前のとこ寄るな」 「へ、留さん?」 「その時返事聞かして」 もう一度おでこに口付けてから、依頼主のところへ向かった。 ここは戦場で血塗れだけど、関係ないほどに心は軽かった。 「やっぱり若いよねぇ」 「ちょっと組頭。何出歯亀してるんですか」 「んー青春っていいよねぇ、とか思っちゃって」 「仕事があるんですから早く戻ってください」 「えー」 「えーじゃありません。ほら行きますよ」 「幸せにね」 「何か言いました?」 「何も。ほら行くよ」 「ちょ、待って下さいよ」