ふよふよと蛍が飛んだ。 夏が来たと知らせるように、初夏の夜を彩る。 「求愛行動に必死だな」 用意しておいた灰色の浴衣を着流しながら、情緒の無い一言。 夏の風情と言うものも、この人の前では無意味すぎて涙が出る。 「命短し、ってやつですよ」 「光ってんのはオスじゃねぇか」 この人相手によく恋仲になれたものだと、少し前の自分を褒めてみる。 最初は女のような手管を使ってみたりもしたけど、気色悪い・似合わないと言われた。 この人の好みは大分捩れていると思う。女装は上手い方なのに。 「でも、命短しは本当ですよ」 「蝉でも蛍でも、オスは苦労するな」 「凄腕さんは苦労知らずっぽいですよね」 凄腕さんは一瞬瞬いてから、にやりと笑った。 「嫉妬か?初めてだな」 「オスは何時だって必死なもんで」 ネコでもオスって言えるのかと笑われた。ネコでも性別はオスですよと言えば更に笑われた。 拗ねて見せれば宥めるように頭に口付けが落とされる。全てが鋭いこの人の唯一柔らかいもの。 心地よさに目を閉じる。 「仕事以外で女を抱いたことはない」 「無理しなくていいですよ」 淡白なのは知っているけど。男として辛いときもあるだろう。 それに、私だけのものにしておくにはもったいない人だ。 この遺伝子はこの人で終わらせてはいけない。 「馬鹿だろうお前」 口付けを落とされた場所を指で弾かれる。 手加減してくれていても痛いものは痛い。 「俺はお前以外相手にする気はない」 さらりと言われた言葉は否応無く頬を熱くさせた。